探訪記
静かな奇跡を探しに、全国各地を訪ね歩く
「ロマンスイーツ探訪記」。
店主の想い、受け継がれた製法、
土地のぬくもり——
時代に流されることなく、
そこに在り続けるかけがえのない物語を
お届けします。
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東京都 町田市
”ほどよい甘さ”が愛される、80代の店主がつくる街のケーキ屋さん。
ボンフル ボンヌール洋菓子店
⼩⽥急とJRが接続する町⽥駅。その周辺は、大型商業施設が建ち並び、多摩地域最⼤の繁華街として活気ある街並みを形成している。 北口の踏切を渡り、駅前の喧騒を抜けると、70年の歴史をもつ栄通り商店会がある。 約1kmの範囲に「店主の顔」の見えるお店が約100店舗。そのなかの1つ。駅から歩いて10分ほどの旧町田街道沿いに『ボンヌール洋菓子店』は建っている。 創業は1969年11月。空き家も目につき始めた商店会にあって、56周年を迎える今も、地元のお客様に愛されつづけている洋菓子店だ。 -
島根県 出雲市
材料は生姜と砂糖だけ。300余年、変わらない究極の手作り菓子。
生姜糖 來間屋生姜糖本舗
日本全国の八百万(やおよろず)の神々が集まるとされる島根県・出雲市。縁結びと神話の地として知られ、古来より神々の不思議な力が宿るとされる場所が、今でも大切に守り継がれている。 その一つ、昔と今が残る町・平田の木綿街道には、300年を超える歴史を守り続ける菓子屋がある。 『來間屋生姜糖本舗』(くるまやしょうがとうほんぽ) 風格ただよう日本家屋で作られる「生姜糖」は、生姜のしぼり汁と砂糖を炭火の窯で煮溶かし、銅製の型に流し込んで固めた菓子。 その味は、江戸時代に第11代徳川将軍家齊(いえなり)や松江藩主に献上して賞賛されたことから、広く知られるようになる。 ひと口かじれば、砂糖の甘さと生姜のほどよい辛さが口の中にひろがる。雑味のない上品な味わいは、300年前の江戸時代の人々が食べたものと変わらない。 つまり、徳川家齊や松江藩主が味わった「生姜糖」と同じなのだ。 -
北海道 留萌市
恋の喜びに包まれた白あんは、食べる人を笑顔にする。
るもいの乙女 千成家
旭川から車で約1時間半。北海道北西部、日本海に面した小さな港町・留萌(るもい)。その形がハートに似ていることから、「ハートのまち」と呼ばれることもある。 そんな町の中心に、ひときわ笑顔があふれるお店がある。和洋菓子の老舗『千成家』だ。お店のモットーは「楽しさの輪を広げる」。 店内は明るく開放的。ショーケースには、日本一美しい夕陽が見られる「こがね岬」、道北最大級の海水浴場に打ち寄せる「さざ波」、陸の孤島と呼ばれる「雄冬岬」などなど、地元の名所や自然をモチーフにした菓子がずらりと並ぶ。 どれもこの町とともに生まれ、この町の人に愛されてきた『千成家』だけの物語を持つ菓子たちだ。 -
愛媛県 今治市
溶けるような白あんに込められた、100年の愛とロマン。
モア モアヤマダ
瀬戸内海の島々を渡りながら、四国と本州をつなぐ「しまなみ海道」。 サイクリストの聖地ともいわれ、橋を駆け抜けながら眺める美しい青い海は、今や国内外の観光客を惹きつける人気のスポット。 その玄関口となる愛媛県今治市は、古くから造船の町として栄え、タオルの町としても知られる。 JR今治駅から歩いて15分。ケヤキ並木が700メートルも続く通りを抜けた先に、創業100年を超える洋菓子店『モア ヤマダ』がある。 -
東京都 足立区
東京で70年。商店街が消えても、生き残る洋菓子の名店
焼き菓子 コシジ洋菓子店
東京都足立区東綾瀬。東京メトロとJRが乗り入れる綾瀬駅の目の前には、巨大なタワーマンションが建設中。街を歩けば、公園が点在し、真新しい集合住宅が建ち並ぶ。 人口減少にあえぐ日本にあって、駅前から広がる東綾瀬の街は、ここ数年ファミリー層が流入し、人口が増えているという。 そんな下町の住宅街に、1軒の洋菓子店が佇んでいる。 かろうじて「東綾瀬商店街」という袖看板の表記に当時の名残りを見ることができるが、通りはシャッター街どころか、民家ばかりでシャッターすらほとんどない。 「そこの戸建てが並んでいるところに、スーパーボールの製造工場があったんですよね」 そう教えてくれたのは、『コシジ洋菓子店』の2代目店主・角田(かくた)純さん。 -
沖縄県 うるま市
”素通りのまち”に灯る、やすらぎのネオンと70円の焼き菓子。
ブラウニー アラモード
南北に長く伸びる沖縄本島のほぼ中間。最もくびれた部分に位置する、うるま市石川。 手つかずの自然が残り、トレッキングや洞窟体験などもできる魅力的なエリアだが、観光客の多くはスルーして、恩納村や名護市へ行ってしまうという。 地元の人が「素通りのまち」と自ら揶揄する石川——。観光客が足早に通り過ぎてしまうこの町に、地元に愛され続ける洋菓子店がある。 『アラモード』 創業当時から変わらぬ味というフレーズは、老舗菓子屋の常套句かもしれない。しかし、『アラモード』は、味だけでなく、値段までもが、まるで時が止まったようなのだ。 いまや洋菓子1個300円以下ではなかなか買えない。東京の人気店ならケーキ1個1000円以上も珍しくない。 そんな時代にあって、『アラモード』の洋菓子は、ほとんど100円台と半世紀前のような価格なのだ。 なかでも、1973年の創業から不動の1番人気を誇る、スティック状のチョコレートの焼き菓子「ブラウニー」は、なんと70円。 しかも、値上げしたのは、ここ数年の急激な物価高になってから。2022年頃までは、創業当時と同じ、50円だったという。 -
佐賀県 佐賀市
創業330年の結晶。すっと口に溶けていく”真実の愛”のケーキ
マーガレット・ダ・マンド 北島
江戸時代、海外貿易の窓口だった長崎と北九州の小倉を結んでいた長崎街道は、砂糖文化を各地に広めたことから「シュガーロード」とも呼ばれ、カステラ、羊羹、鶏卵素麺などをはじめとする独自の食文化が花開いた。 日本遺産にも登録される長崎街道と、佐賀駅から南へ伸びる目抜通りが交わる一角に、小麦色の外観が目を引く老舗菓子屋がある。 江戸時代から歴史を刻んできた『北島』。 「丸芳露本舗(まるぼうろほんぽ)」と聞けば、あの丸いお菓子を思い出す人も多いだろう。 そんな佐賀県を代表する銘菓「丸ぼうろ」をはじめ、数々の名作を生み出してきた老舗に、マーガレットの花を模した、ひときわ可愛らしい焼き菓子がある。 「マーガレット・ダ・マンド」 1度につくれるのは、わずか12個だけ。 マーガレットの花言葉「真実の愛」にちなみ、贈り物としての注文が後をたたない。 クリーム状になるまで丹念にバターを混ぜ、アーモンド粉をたっぷり使った生地をじっくりと焼き上げる。 その製法は、『北島』の技術の結晶という。 -
青森県 十和田市
手触りだけを頼りに作る、果肉たっぷりのしっとりケーキ。
アップルケーキ 相馬菓子舗
十和田湖や八甲田山といった景勝地で知られる青森県十和田市は、近年、アートのまちとしても人気が高まっている。 その中核的な存在である十和田市現代美術館の元館長で、無印良品の創設にも携わったクリエイティブ・ディレクターの小池一子さんが、絶賛するスイーツがある。 美術館から歩いて8分ほど。国道102号線沿いに建つちいさな菓子屋。 『相馬菓子舗』の「アップルケーキ」だ。 しっとりした生地の中に、りんごの果肉がたっぷり入ったパウンドケーキ。シャキシャキの食感がジューシーで、手のひらサイズでも、食べ応え十分。 そして昔から変わらない真っ赤なりんごが大きく描かれたレトロなパッケージもかわいい。さすがアートのまちの老舗菓子屋だ。 お店には、県内外からはもちろん、最近は海外からも多くのお客様が訪れる。 それでも父から店を継いで40年以上という相馬英夫さんは、控えめな言葉を繰り返す。 「何も特別なことは、していないんですよ」 -
群馬県 沼田市
”世界一おいしい”と評された、賛否両論の手焼きのバウム。
バウムクーヘン 洋菓子工房 樫の木
群馬県北部。雄大な山々に囲まれ、いまも豊かな自然がのこる沼田市は、1990年に日本ではじめて人と自然の共生を目指す「森林文化都市」に認定された。 「東洋のナイアガラ」と称される「吹割の滝」は、新緑や紅葉と季節ごとに表情を変える名爆で、近年は訪日観光客の姿も増えている。 そんな東京から日帰りも可能な沼田の町に、明治時代から時を重ねる一軒の洋菓子店がある。 『洋菓子工房 樫の木』 取材中もお客様が途絶えない。そして多くの方が同じ商品を注文する。 切り株のように太い年輪にチョコがコーティングされた「バウムクーヘン」だ。 -
沖縄県 那覇市
バタークリームをサンドした、昭和レトロな濃厚スポンジケーキ。
マーブルケーキ トーエ洋菓子店
2003年に運行を開始した沖縄県唯一の鉄道・ゆいレールの壺川駅から、桜の名所の与儀(よぎ)公園へ向かって歩くこと22分。 与儀小学校のある十字路から徳利のように幹の膨らんだ木々が並ぶ通りを進むと、あざやかな黄色とオレンジのストライプのひさしに赤い店名が目に飛び込んでくる。 『トーエ洋菓子店』 夏のある日の平日の昼間でも、お客様が次から次へとやってくる人気のケーキ屋さんだ。 「赤と黄色に特に意味はないですが、目立っているので、いいかなと思っています」 -
北海道 江差町
金時豆でつくる、日本最古の糸で切る羊かん。
丸缶羊羹 五勝手屋本舗
観光客であふれる函館から、西へ車で1時間半。峠を越えながら、ようやくたどり着いた小さな町・江差町(えさしちょう)は、北海道文化発祥の地といわれる。 江戸から明治時代にかけて、日本海を舞台に活躍した北前船によって繁栄し、ニシン漁の最盛期には「江差の五月は江戸にもない」とうたわれるほど、盛大で華やかなものだったという。 そんなかつて栄華を極めた江差の町に、強烈な個性を放つ和菓子がある。 一見すると小さな手筒花火?のような細長い円柱。 目を引く真っ赤なパッケージに、貨幣や鈴蘭のイラストや賑やかな装飾が施され、手に持つとなんだかありがたい気分になる。 蓋を取ると、濃いあめ色の表面にたっぷりと砂糖がまぶされている。その部分を臆せずギュッと押しつぶしたら、こんどは筒の底の部分を指で押し上げる。 すると筒の上からニュッと出てくるのは、なんと羊かん! その羊かんを、筒についている糸でくるりと回して切っていただくのが流儀。 手を汚さずに、食べたい分だけ食べられる「糸式羊かん」の最古参といわれる『五勝手屋本舗』の「丸缶羊羹」だ。 味わいもまた個性的。しっかりとした甘さは印象的だが重くなく、あっさりしていて、しつこくない。 原料が「小豆」ではなく「金時豆」だから、あんこが嫌いで、羊かんが苦手でも「五勝手屋の羊かんだけは大好き」というファンがたくさんいるという。 人口6500人ほどの小さな町で、1日1万本以上も作られている「丸缶羊羹」。その歴史は江戸時代にまでさかのぼる。 -
千葉県 館山市
平和へのバトンを受け継ぐ、花の町のやさしいクッキー。
ロシアケーキ ピース製菓
千葉県の房総半島の南端近く。東京から車で最短1時間半でたどり着く館山は、温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、近年は移住者も増えているリゾートタウン。 海へむかってヤシの木が連なり、街並みはどこか南ヨーロッパ風。 そんな館山駅から徒歩約10分、昔ながらの製菓店がある。 『ピース製菓』 創業は、戦後すぐの昭和23年(1948年)。年季の入った店舗や店内は、ザ・昭和。 ショーウインドウには、サブレや大福やモナカとこちらも昔ながらの定番お菓子が並ぶ。 長年、つづいているお店は、例外なく、味がいい。ただ、『ピース製菓』のその味は、”並”ではない。 何せ、天皇皇后両陛下がご購入されたお菓子まであるのだ。ご献上ではなく、「お買い上げ」。 しかも、翌年も「お買い上げ」されたというから、ミシュランどころの話ではない。 そんな確かな味を誇る和洋菓子たちに紛れ、年間を通じてさまざまな花が咲き誇る、花の町・館山らしいお菓子がある。 昭和初期に日本で誕生したレトロなクッキー「ロシアケーキ」だ。 鮮やかなトッピングは、「まるで宝石のような」と紹介される『ピース製菓』の静かなロングセラー。 最近では昭和レトロのブームもあってか、「あ、ロシアケーキ!」と若い人たちも手を伸ばすとか。 南房総の名店『ピース製菓』の平坦ではない歩みを探ってみた。 -
沖縄県 那覇市
「の」、書きますか? お祝いのお饅頭は、母からの贈り物。
のまんじゅう ぎぼまんじゅう
世界遺産・首里城跡のある首里公園から歩くこと約15分。ゆいレールの石嶺駅からなら5分ほど。 住宅街の一角に、ひっきりなしにお客さんが訪れる饅頭屋さんがある。 那覇(あるいは沖縄)三大饅頭の1つに数えられる『ぎぼまんじゅう』だ。 -
山形県 山形市
創業220年の歴史を支える、満点の”十”に”一”の真心
チルミー 十一屋
東京駅から山形新幹線つばさに揺られて約3時間。到着した山形駅直結の展望ロビーからは、雄大な蔵王連峰に向かって広がる街並みが見える。 街の中心は、山形駅から歩いて20分ほどの七日町。 その一角の七日町商店街にはアーケードがなく、電柱、電線も見当たらない。開放感のあるモダンな景観。 さらに進むと、大通りを1本の水路が横切っている。約400年前につくられた水路の1つである「御殿堰(ごてんぜき)」を復活させたという。 石積みの水路のまわりには、江戸時代から残る町屋を活かしたレトロな建物が並ぶ。 レトロとモダンが混在した七日町では、今日も多くの人たちが街歩きを楽しんでいる。 実は、山形県は、百年をこえる老舗企業が京都に次いで多い。 その中でも、ひときわ長い歴史を持つお菓子屋さんが、御殿堰に沿って店舗を構える『十一屋』だ。 -
広島県 府中市
宣伝ゼロでも全国から注文殺到。旨味したたる洋酒のケーキ
洋酒ケーキ くにひろ屋
広島県の中東部に位置する上下町(じょうげちょう)。 かつて江戸幕府の直轄地として栄えた町には、今も当時の栄華を偲ばせる町並みが残り、周囲には豊かな自然と美しい田園風景が広がっている。 そんな上下町に、たった1種類のケーキをひたすら作り続けるお菓子屋さんがある。 『くにひろ屋』 カステラにラム酒とブランデーの特製シロップをたっぷり浸した「洋酒ケーキ」は、スイーツ好きはもちろん、お酒が苦手な人でも病みつきになる程の味わい。 これまで宣伝も、営業も、いっさいなし。 それでも全国からお取り寄せの注文が舞い込む。口コミは絶賛のコメントで埋め尽くされている。 以前、グルメで鳴らす大物タレントが「これ美味しい!」と絶賛して、大変なことになったこともあり、最近は人気テレビ番組からのオファーもすべて断っている。 「お土産で食べて美味しかったからという方がほとんど。ありがたいです」と語るのは、『くにひろ屋』の代表・前原浩一さん。 2005年に創業者の故・曽根利之さんから店を引き継いだ。 「曽根さんが作ったこのケーキの味をとにかく守っていく。それが私の役目です」 -
静岡県 浜松市
明治創業の老舗で味わう、ニューヨーク生まれの濃厚ケーキ
ニューヨークチーズケーキ 遠州菓子処 むらせや
掛川駅から天竜浜名湖鉄道に乗り換え、単線をガタンゴトンと揺られること50分。 日本の原風景を眺めながら、ようやく着いた天竜二俣駅は、木造の母屋やプラットフォームなどが国の文化財に登録されている。 ノスタルジック満載な駅にはもう1つ、別の顔がある。 日本が世界に誇るアニメ「エヴァンゲリオン」のシリーズ完結編となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に登場する「第3村」のモデル地の1つなのだ。 映画の公開時には、多くのファンが聖地巡礼として、この小さな駅を訪れたという。 そんな駅のある浜松市天竜区は、区域の90%以上が森林という緑豊かな地域。市街地は狭く、政令指定都市の行政区としては、人口も人口密度も最小の区だ。 -
新潟県 糸魚川市
取材NGの極秘製法でつくる、クリームの飛び出さない不思議なケーキ
ミニロール 御菓子司 長野屋
新潟県糸魚川市の西の端。富山県との県境の町・青海。 目の前にはその名の通り美しい青い日本海が広がり、振り向けば、新潟百名山の青海黒姫山が雄大にそびえる。 その海と山にはさまれた青海駅から歩いて2分。 以前はにぎやかな商店街だったという静かな県道に、来年創業100年を迎える老舗菓子屋がある。 『御菓子司 長野屋』 地元の銘菓から普段使いの和菓子、洋菓子、ケーキにアイスと幅広いラインナップの中で、冬の人気No.1商品は、ちいさなロールケーキの「ミニロール」。 味はバニラ、小倉、チョコ、チーズ、抹茶の5種。10月から4月末までの限定商品だ。 ロールケーキといえば、大きな口でもぐっと食べる満足感がうれしい反面、たっぷりのクリームがむにゅっと飛び出してしまうのが難点。 ただ『長野屋』の「ミニロール」は、ちょっと違う。 指2本でも持てるちょうどいいサイズはカットする手間もなく、口の小さな子供でも食べやすい大きさ。 そして何より勢いよく食べても、たっぷり入ったクリームが飛び出さないのだ。 見た目はいたって普通のロールケーキ。なのに、どうして『長野屋』の「ミニロール」はクリームが飛び出さないのだろう。 その秘密は、取材NG、撮影NGの超極秘製法にあるという。 そんな門外不出の「ミニロール」が生まれたのは、いまからなんと50年以上も前なのだ。 -
新潟県 新潟市
「普遍的なおいしさ」を探しつづける職人の最後のケーキ
ガトー・オ・ノア マロン洋菓子店
新潟駅からローカル線に揺られること15分。昼過ぎに降り立った早通駅には、雪が降り積もっていた。 駅前から人影のないの商店街の奥に、鮮やかな青い屋根が見えた。 『マロン洋菓子店』 東京を中心に関東にはマロンを名乗る洋菓子店がいくつかある。 この新潟市北区にある『マロン洋菓子店』もまた、東京の「マロン」で修行し、名乗ることを許された由緒ある洋菓子店の1つなのだ。 -
福島県 白河市
今なら不可能? 名前もレシピも謎だらけの魅惑のケーキ
カルソー 御菓子司 えんどう
新幹線の停車駅で唯一村にある新白河駅。その東口から車で5分ほど。国道のぶつかり合う交差点に来年創業100年を迎える菓子屋がある。 『御菓子司 えんどう』 お店のサイトをのぞくと、人間は甘さの感覚を自然から学んだと唱え、お菓子の原点を追い求めて合成甘味料を一切使用しないと掲げる。 さらに、自然の恵みの宝庫である地元福島の素材はもちろん、自然の旨みを引き立て、季節感を大切にした菓子づくりにこだわるとうたう。 看板商品は、ふんわり生地に塩味のきいたバタークリームと角切りチーズがたっぷり入ったチーズブッセ「白河の月」。 他にも、大粒で極軟の栗をひとつずつ丸ごと入れた福を呼ぶ開運銘菓「白河だるま」。 素朴な風味の芋飴とさわやかなりんごの果肉をもちもちとした食感の生地でつつんだ新食感の焼き菓子「ぽてっぷる」。 などなど、オリジナリティあふれる商品群は、和菓子、洋菓子、ケーキと幅広い。 そんな中、サイトのどこにも載っていないのに、いきなり「1500個!」と大量注文を受けることもある謎の洋菓子がある。 かの総合生活雑誌『暮らしの手帖』では、「ホワイトチョコレートの魔性のケーキ」と紹介されたという。 欧風銘菓「カルソー」 レトロな金色の包装も、レシピも、名前もずっとおなじ。でも、その由来は謎、謎、謎。 60年以上前といわれる、その誕生もまた謎につつまれているという。 -
青森県 西津軽郡 鰺ヶ沢町
幻の魚の洋菓子? 元エンジニアが受け継ぐ名産菓子の物語。
イトウ焼 銘菓の店 山ざき
青森市内から西へ車で1時間ほど。北は日本海を臨み、南は世界自然遺産「白神山地」を有する鰺ヶ沢町。 「ブサかわ犬」として映画にもなった秋田犬「わさお」で一躍有名になった町には、もう一つ全国区の名物がある。 本州では絶滅し、幻の魚ともいわれる日本最大の淡水魚「イトウ」の全国でも数少ない養殖地なのだ。 青森県の鰺ヶ沢町では白神山地を水源とした赤石川の清流を利用し、1985年から養殖をはじめている。その味はサケより淡白でクセがなく、川のトロといわれるほどの美味。希少な高級魚ゆえ日本で食べられるのはおそらく鰺ヶ沢だけだ。 そんな鰺ヶ沢に「イトウ」を名乗る菓子がある。 『銘菓の店 山ざき』の「イトウ焼」だ。 パッケージには水面から勢いよく飛び上がるイトウ。まさか魚介系のお菓子?とたじろぎそうになるが、イトウが入っているわけではない。 中身は、ホワイトチョコレートを5ミリほどのアーモンドサブレではさんだフロランタン風の洋菓子。ほんのりと風味があり、甘すぎず、ほどよい歯応えで、思わず2枚目に手が伸びてしまうクセになる味わい。 なぜ「イトウ焼」というネーミングなのだろう。 『銘菓の店・山ざき』の3代目店主・山崎康裕さんはいう。 「鰺ヶ沢でしか作れないお菓子を作っていきたいんです」 -
滋賀県 蒲生郡 日野町
絶品のスポンジで目指す、日野のソウルフード。
マドモアゼル 洋菓子の店 不二屋
滋賀県東部。中野城の城下町として整えられた日野町は、「三方よし」で有名な近江商人を多数輩出した町としても知られる。 近江鉄道の日野駅から約3キロ。日野町役場から日野商人街道へ向かって5分ほど歩くと、突如、アルプスの麓から切り抜いたような三角屋根に可愛い煙突が突き出た建物があらわれる。 『洋菓子の店 不二屋』 のどかな日野の町で一際目立つ店舗は、スイスやドイツの民家をモデルにしている。その完成度は、ドイツから来た楽団員が「故郷の家にそっくりだ」というほど。 店舗同様、作っている洋菓子もスイスやドイツの影響を受ける。 その1つが、ドイツ生まれの焼き菓子バウムクーヘンから着想を得て生まれた「マドモアゼル」。 -
岐阜県 高山市
飛騨高山でよみがえる、50年前のお菓子の記憶。
クーベルチ フランス菓子 リヨン
美しき日本の原風景、合掌造り集落の世界遺産・白川郷。その玄関口となる岐阜県の飛騨高山もまた、江戸時代の古い街並みを残す観光名所として世界中から旅人がやってくる。 JR高山駅から1キロほど。ホテルの建ち並ぶ県道を抜け、苔川(すのりがわ)に向かって歩くと切り絵のようなシルエットの女の子の看板が見えてくる。 -
東京都 江東区
東京の下町で孤高の職人が目指す、誰も見たことのない菓子屋。
マロングラッセ モカドール洋菓子店
東京三大銀座の1つ「砂町銀座商店街」。東京の下町・江東区北砂を貫く全長670メートルの長い商店街には、約180の店舗がひしめき合っている。 毎月10日に開催される「ばか値市」となれば、活気あふれる掛け声が響き、満員電車のごとくお客さんで大混雑する。 そんな下町の商店街のちょうど真ん中あたり。チョコレート色の外壁、ピカピカに磨かれたショーウィンドーや鏡、そこに達筆な立て看板という少し不思議な佇まいのお店がある。 -
滋賀県 高島市
琵琶湖で100余年。消えかかる秘伝の手作りせんべい。
藤樹せんべい 大阪屋
日本最大の湖・琵琶湖。その面積は滋賀県の約6分の1だが、県の中央に横たわっているためか、存在感はもっと大きく感じる。 その琵琶湖の湖岸。滋賀県北西部の近江今津駅から歩いて10分ほどの神社の前に、小さなせんべい屋がある。 -
群馬県 太田市
こだわりのあんこが詰まった伝説の名車菓子。
スバル最中 伊勢屋
群馬県の太田駅北口から5分ほど。とある工場の門柱にはこう表記されている。 「スバル町1−1」 ここは自動車メーカー・スバルの本工場。「スバル発祥の地」といわれ、スバル町は2001年に成立した正式な地名だ。 スバルは日本最大規模の航空機メーカーだった中島飛行機をルーツに持ち、戦闘機(零戦)を作っていたことでも知られる。その特異な生い立ちもあり、職人魂あふれる独特な自動車メーカーとしてのブランドを確立している。 そんなスバルの熱狂的なファンは、いつしか「スバリスト」といわれるようになった。 他の自動車メーカーにはファンを一括りにするような呼び方がないことからも、スバルの個性とスバリストたちの愛情の深さがわかる。 スバリストたちは「スバル詣(もうで)」と称して、この本工場の前で愛車と写真を撮るという。 そして、もう1ヶ所。スバリストたちがこぞって立ち寄る場所がある。 本工場の正門の前に建つ、小さな和菓子屋『伊勢屋』 『伊勢屋』で人気車種のレガシィB4をかたどった「スバル最中」をいただく。それがスバリストたちにとって欠くことのできない「スバル詣」の作法となっているのだ。 「スバル最中」と聞いて、スバリストの情熱に便乗した企画モノだと思ったら大間違い。 その歴史は古い。「スバル最中」の発売はなんと今から60年以上前の1961年3月なのだ。 さらに『伊勢屋』の歴史は、もっと古い。 スバルの前身である中島飛行機がこの地に工場を構えた同じ年に、『伊勢屋』もまたこの地に誕生した。 3代にわたる和菓子職人の歩みは、今年90年目を迎える。 -
宮城県 仙台市
仙台の地で57年。創業から伝わる強めの甘さがクセになる。
フロリダ/ヌス・シュニンテン ガトーかんの
仙台駅から電車で6分。北仙台駅の南側にある100メートルほどの小さな横丁。 戦後の1958年に日用品の市場を開いたのがはじまりと言われ、当時は八百屋や魚屋が並ぶ商店街だった。その後、東京の浅草にあやかりたいと「仙台浅草」と名づけられた。 最盛期は人がすれ違うのも大変なほどの賑わいだったという。 しかし、時は流れ、日本中から横丁や商店街が姿を消していくように「仙台浅草」もまた、さまざまなお店ができては消え、現在は居酒屋やスナックが立ち並ぶ飲食店街になっている。 平日の昼間は人影もまばらで、ひっそりとしていた。 そんな変わり続ける横丁の景色の中で、ずっと変わらずにあるお店が一軒だけ。 洋菓子専門店『ガトーかんの』 創業1967年。当時は路面電車から見えたという「仙台浅草」の南の玄関口に建つ『ガトーかんの』は、今年で57年目を迎える。 看板商品は、外側をチョコでコーティングしたアーモンドのフロランタンクッキー「フロリダ」とヘーゼルナッツとヌガーをサンドした「ヌス・シュニテン」。